芸術家の描く水辺の姿に感動する

東京のブリジストン美術館で「セーヌの流れに沿って〜印象派と日本人画家たちの旅」と題する展覧会が開催されており、久々に楽しい絵画展をみることができた。
見どころや展示作品については館の下記ページをご参照いただきたい。
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibit/index.php

私は国内、ヨーロッパを問わず出かけた先では博物館・美術館を訪問することにしているが、いつも不満だったのは水辺の描写が思ったより少ないことだった。画家や写真家は多くの水辺を切り取っているはずなのに、展示されているものはそのうちのごく一部ではないかと思われたのである。
古くから人類は水辺を重要な生活の場としてきた。それは飲料水のためだけでなく食物生産のためにも、動物の捕獲のためにも、そして移動手段のためにも、水辺は人類にとって大切な場所であったはずである。
現代の私たちが水辺で「安らぎ」「うるおい」「癒し」などを感じるのは、「ヒト」がかつて獲得した遺伝子によって水辺に引きつけられているからだと私は思っている。
その水辺に引きつけられる「ヒト」の感性を、芸術家たちはどのように表現するのか大変興味深いものがあった。
たまたま私の好きな印象派の画家たちが、セーヌを描いている展覧会にめぐり逢うことができて今日は幸せな一日を送ることができたのである。
セーヌの上流域から河口までの水辺のさまざまな姿を、画家たちは情感豊かな感性で描きあげる。あたかもそこに水面があるかのような作品には感動するばかりである。パリに行った旅人は一度は見ているポン・ヌフとセーヌ川の姿も、画家によってさまざまな姿に変わるところは愉しい。
水の専門家として感動した一枚の絵があった。クロード・モネの「アルジャントゥイユの洪水」である。
1872〜73年にかけて冬の雪解け水で増水し洪水に見舞われたたセーヌ川と河畔の散歩道を、見るものを震撼させるタッチで描いている。
一般に画家たちが描く水辺は、のどかな田園風景やそこでの人々の生活、営みの場面が多く、河川の洪水のような場面はあまり描かれない。モネのこの作品は150年ほど前の作品だが、人々が自然への畏怖を忘れかけていることへの警鐘とも受け取れる。
すばらしい作品群を収集して見せた美術館関係者の努力には敬意を表したいと思う。
さて、この展覧会を見て「日本国内の水辺の展覧会を見たい」と思ったのは私だけだろうか。
確かに、セーヌは印象派の拠点としての地域を流域に抱えていることから、歴史的にもまとまった流れが見える世界でも唯一といってもよい河川だと思う。ただ、水辺の感性は画法を越えて人々を引きつけるものがあるはずであり、国内で活躍した画家たちが描く水辺をぜひ私は見てみたいと思う。
筑後川、吉野川、琵琶湖、淀川、千曲川、信濃川、利根川、十和田湖、石狩川などなど、国内で絵画の対象となった水辺は数限りない。
ブリジストン美術館だけでできるものとは思えないが、全国の美術館が連携して作品を収集し移動展を開催していただくことを、私は心から願っている。
日本国民のみずみずしい感性を、芸術作品からもう一度取り戻してほしい、と思うばかりだ。

(この展覧会は東京展は23日まで、広島展は1月3日から2月27日まで開催)


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