妖怪は人と自然の守り手だ!?

 NHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」が昨日最終回となった。「鬼太郎」とともに青春時代を過ごした私たちと同世代の者には懐かしい場面が多く、年寄り連には久々にNHK東京のヒット朝ドラだったように思われただろう。
ところで、このドラマで私が一番印象に残ったのは、水木しげるがスランプに陥ったとき、小学生の遠足につきあってフラッと林に入り、水辺で妖怪と遭遇する場面だ。そのとき妖怪は「あんたが絵画きなら俺たちのことをもっと描いてくれ。近頃は誰も気にしてくれなくなったので、このままじゃあみんないなくなってしまうぞ」といった意味のことを、水木しげるに言い残して消えてしまうという場面だ。
今では、子どもたちは妖怪の話も聞いたことがないのだ。
しかし、かつてわが国は妖怪の天国だった。全国どこにでも妖怪伝説があり、子どもたちは祖父母からいつも怖い話を聞かされていた。
そして、この妖怪伝説の多くは、人々に自然への畏怖を与え、注意を喚起する役割を果たしていたのだ。一人で山へ入らない、みだりに植物を伐採したり動物を捕獲しない、など巧みに子どもたちに教訓を授けるものだった。
水の世界では「青坊主」のように、川の深みから子どもの足を引っ張ってしまうやつがいる。河童伝説も同じだが、子どもたちに地域の川での遊び方を教えるものだった。「水路におしっこをするな」なども妖怪こそ出てこないが、「チンチンがはれる」とおどかされていた。
妖怪伝説はご先祖が地域の自然界とのおつきあいの仕方を、細かく伝えてくれた伝承的指示書のようなもので、古来の環境教育書と言ってもよいかもしれない。
朝ドラに触発され妖怪をまちづくりに利用するのは結構だが、水木さんや妖怪の銅像を建てたりするのは、スジが違うのではないか。
できることなら、里山に残る妖怪伝説の伝承を是非続けていただきたいと思う。それこそ、水木さんの意図に合致するのではないか。
都市部では貧困、失業、犯罪と人間界の方が妖怪で満ちており、過去の妖怪伝承におつきあいする余裕なんてないかもしれないが、こんな時こそゆっくりと古き良き妖怪と対話してみたいものだ。

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