原料が検出限界値以下でも、汚泥からなぜ大量のセシウムが?

 

昨年、福島第一原発が爆発した際、広範囲に飛散・沈着した放射性物質が降雨によって河川や海に流出していることがわかっている。

昨年の4月には首都圏の上下水道の汚泥からも高濃度のセシウムが検出され、飲み水の汚染も危惧される状況がしばらく続いた。この現象は福島県や関東・首都圏だけでなく遠く離れた新潟市内の浄水場の汚泥からもセシウムが検出されたことで、放射性物質の汚染が広範囲におよんでいることを示した。

福島県内では土壌や用水に問題がないと思われていた水田で、収穫した米から国の基準値を超えるセシウムが検出され問題になっている。

このような問題を考える際に、一番気をつけていただきたいのは汚染物質の「濃度と総量」である。

私たちは環境汚染を考えるとき、一般に濃度を基準にしてその汚染の強弱を測っている。以前のブログで紹介したホルムアルデヒドも、水道水質基準では「10.08唹焚次廚版仕戮納┐気譴討い襦

日本の環境基準だけでなく、国際的なさまざまな汚染物質の基準も濃度で示されており、このことによって私たちは異なった地域でも同一物質の汚染状況を客観的に評価ができるようになっている。

しかし、環境汚染を評価する際に濃度だけに頼っていると、とんでもない事態を見逃してしまうことがある。たとえば、ある有害物質が動植物の体内に蓄積する可能性があるとすれば、たとえ毎日摂取される濃度が低濃度であっても、動植物が毎日どの程度の量を蓄積していくのか、という「量」が問題になってくるのである。

さて、原発事故で環境中に放出された膨大な量の放射性セシウムも、同じように濃度と量の問題が起こっていたのである。河川水11函謀たりでは「検出限界値以下」で処理されているのに、その河川水を水道水として処理をしてみると、残された汚泥からは1堙たり数万ベクレルのセシウムが検出された事例が頻発しているのはなぜか? このカラクリは以下のようなものである。

河川水中の放射性セシウムの濃度が10.1ベクレルであったとすると、通常の計測ではセシウムは検出もされず「検出限界値以下」で処理されてしまうが、この河川水を原水として日量2万トンの水道水を供給していたとすれば、その2万トンには総量で200万ベクレルの放射性セシウムが含まれていたことになる。この河川水からセシウムをすべて除去して水道水を供給したとすると、そのセシウムは浄水汚泥に移行していることになり、あとは浄水汚泥中の総量200万ベクレルがどれだけ濃縮されるかで、1堙たりのセシウム量が変化するということになるのである。

昨年4月以降に上下水道の処理施設の汚泥から大量の放射性セシウムが検出され、国の処分基準である1堙たり8000ベクレルを超えてしまったのは、処理過程での濃縮が主な原因だったのである。

ということは、一日当たりの処理水量と発生汚泥量、汚泥中の含水率とセシウム濃度がわかれば、逆算することで原水中のセシウム濃度も算出することができるということになる。

「水道原水は検出限界値以下なのにセシウムはやっぱり入っていたのか」と思われるかも知れないが、むしろ日本の水道技術とそこに関わる職員の努力で、処理後の浄水はWHO飲料水水質ガイドライン(わが国飲料水新基準もこれにならっている)をはるかに下回る放射線量となっていることを知っておいていただきたいと思う。

ただ、原発事故から一年以上経過しても、関係機関は汚泥中の放射線量データの計測と公表は継続するべきである。それは、自然界における放射性物質の挙動をモニタリングする役割を果たしているし、たとえ微量でも地域の人々に摂取されるセシウム量を知ることができるようにしておく必要があると考えるからである。

(本文は同趣旨の内容を「食べもの文化」に投稿したことをお断りしておく)


高圧洗浄機で除染ができるのか?

 福島県内で放射線量の調査を行っていて気になったことがある。主に降雨によって放射能が流出した実態を調べ、膨大な量の放射能が海に流れ出てていることや、豪雨時の河岸堆積物に大量の放射能が残存していることがわかった。
 一方で福島県内は9月21日の台風15号の豪雨をはじめ大雨が何度かあったが、空間線量自体は劇的に低下したというわけではなく、福島市や郡山市のような都市化された地域でも、降雨ですべての放射能が洗い流されたわけでもなさそうである。理由は放射性物質が空気中のチリや粘土鉱物にくっついて沈着するものの、微小粒子が目に見えないほどのくぼみに入り込んで、少しぐらいの降雨では洗い流すことができないからだ。
 そこで、除染のために高圧洗浄機を使っている様子がニュースでも報道されるのだが、本当にこれで「除染」できているのか疑問である。第一に高圧ジェットで隙間から微小粒子をたたき出すことに成功しても、周辺の空気中に飛散しているだけで一時的にその地点の空間線量が下がったとしても、周辺に再沈着してしまえば地域の沈着総量は結局のところあまり低下しないのではないかという危惧である。第二に、高圧洗浄機は少量の水で微小粒子をたたき出すことに成功しても、その後始末を考えておかなければ、結局大量の放射性物質を集積させて放置することになってしまうのである。
都市部の下水道雨水幹線下流の沈殿物から高濃度のセシウムが検出されるのは、その事例の一つである。
放射能の除染は「たたき出す」「洗い流す」だけでは完結しておらず、大気中への再飛散防止と流出物の処理を完璧に行わなければ、地域の空間線量は低下しないはずだ。
手間はかかるが、吸着フィルムの施工や側溝への吸着物質の投入など、発生源でのきめの細かい除染対策が必要ではないか。

身近な放射能汚染をチェックしよう!

 夏以降バタバタしていたため、ブログの更新が進みませんでした。申し訳ありません。次第にデータもあふれ始めておりますので、少しずつブログも再開いたします。
このブログでも5月4日付で下水汚泥の放射能汚染について警鐘を鳴らしたが、思った通りの事態があちこちで頻発するようになった。
最近では千葉県柏市の道路側溝の破損箇所から、高濃度の放射能汚染土壌が見つかった。
筆者は5月4日のブログで雨水によって放射性物質が流出して集積する危険性を述べたが、そのとおりのことが発生している。
文科省は航空機による放射性物質の空間線量と土壌への沈着量を県別で発表しているが、沈着量については10000ベクレル/岼焚爾砲弔い討楼貎Г謀匹蕕譴討い襦9匐機では高濃度の所だけ判別して、あとは問題なしという考えであろう。たしかに同時計測された空間線量を見ても、0.1マイクロシーベルト/hr以下の範囲はほぼ同一なので問題なしと考えているのだと思う。
しかしこのままでは問題は片づかない。家屋に沈着した放射性物質がそのままならば何の問題もないが、降雨時にはこれらは必ず移動する。仮に家屋の建坪が20坪(66屐砲△辰督醒緡未200ベクレル/だったとした場合、それらが降雨によって流出して何らかのフィルターがかかったとき、沈着した粒子が大量にそのフィルターに捕捉されることになる。
たまたま雨樋から一箇所に集まり、庭の砕石にまかれて土壌でトラップされていれば、そこには13200ベクレルの放射性物質が集積することになる。
同様のことが、雨水桝、道路側溝、水路の泥ダメ、そして河川の増水した際の河川敷等々、身近な水の通り道に発生している可能性がある。
都市域の市民のみなさんには何度も申しあげているが、住居の周辺や子どもたちの遊び場で、水のたまりやすい、泥水がたまりやすい所をきちんと計測していただきたいと言うことである。
環境省のデータによれば、阿武隈川の底泥からもセシウム137が大量に計測されており、これらが移動していることもわかっている。地域の環境と川や海洋の環境が密接につながっていることを意識しながら、除染にも取り組んでいただきたい。
行政は放射性物質が集積しそうな場所を徹底して先に調査すべきだろう。

地下水(井戸水)モニタリングを急げ(つづき)

 先日のブログで「地下水モニタリングを急いで、かつ継続的に実施する」必要性について述べた。その中で「ボーリングのケーシングにそって汚染物質が早期に地下水に混入する」話を書いたが、「もう少しわかりやすく説明して」というご意見があったので、ここに図を書いてご説明しようと思う。
地下水流動の模式図

上図のように地下水を汲み上げる際には、地表から地下水位の下までボーリングや井戸掘りを行い、ある大きさの筒を差し込んでその筒内にたまった地下水を汲み上げることになる。表流水に混じっている汚染物質は一般的には土壌表面から重力によって地層を垂直に落ちて(浸透して)くるため、表層付近がが粘性土であるとほとんど浸透することはないので、この重力浸透だけでは地下水が汚染されることはあまりない。だが地下水が豊富にあるところは多くの場合、砂質に富んだ地層が挟まれており、そこではかなりのスピードで地下水は(地中を)下流へ流下するので、砂層の地下水流に達した汚染物質は容易に井戸の筒まで流下することができる。。
表流水も表面勾配にそって流れるが、井戸水を汲み上げる筒がその流れる途中や、表流水のたまりやすい場所にある場合は、筒の壁面にそってかなりのスピードで表流水と一緒に汚染物質が地下に流入してしまう可能性がある。(上図参照)
汚染物質が井戸水に流入する最も早い経路は、筒の上部や壁面に損傷を受けているときであるが、これがない場合でもこの外壁面にそって落ちる地下水が要注意なのである。
かつて大手メーカー工場からかなり離れた井戸水が汚染されていることがあり、その事例はこの筒(ケーシング)外壁面からの汚染物質流入だった。
特に今回の放射性物質の問題では、井戸の設置場所が以下のような所では要注意と思われる。
●井戸が傾斜地の下流側にある場合。
●傾斜地の下流側で、傾斜が緩やかになっているところにある場合。
●井戸の壁(筒)が地表面に出ていて、雨水がその周りにたまりやすくなっている場合。
●これまでに硝酸性チッソや大腸菌群数の値が高いと保健所から言われたことがある場合。
●深井戸であっても大丈夫ということはなく、上記のように井戸の外壁面にそって汚染物質が流入する事は容易に起こりうる。先に挙げた大手メーカーの汚染事件は深井戸での汚染だった。
関東・東北地域で放射性物質の線量が問題になっているところでは、上にあげたような井戸水は急いで検査をするように、行政機関に要望していただきたい。
建家内に井戸が設置されている場合でも、地下水が浅層からいつも豊富に汲み上げられるような場所では、定期的に検査をするように要望していただきたい。
また、初回の測定時に低レベルであったからといって安心してはいけない。なぜなら、今までの保健所の審査項目には放射性物質は含まれていないので、自然状態でのバックグラウンド値が不明のまま測定しているため、初回の測定値がこれまでと同じなのか、増えつつあるのかの判定ができないからである。
たとえ低レベルであっても放射性物質が測定された場合は、家庭内の水源を全面的に水道に切り替え、増加傾向のないことを確認するまで、井戸水は毎日汲み上げつつ測定し続けるべきである。汲み上げた水も自然界に汚染物質が蓄積しないように排水路に速やかに排出できるようにしておこう。
地下水汚染は長い時間をかけてわれわれの前に姿を現し、それが消滅するまでもまた長い時間がかかる。
原発の周辺の地下水汚染だけでなく、大気中にばらまかれた放射性物質による地域の水の汚染にも目を光らせていただきたい。
地下水汚染が発生したら、汚染者負担の原則で東電には問題解決までの負担を要望していただきたい。
水道水は浄水場で管理しているが、井戸水は公水を個人が利用しているので、利用者が自分で責任を持って管理しなければならない。ある意味では「地域の水のアンテナであり守り手」でもある。外部からの地下水汚染に対しては地域の代表として、地下水を守る気持ちを強くもって、行政機関に対する要望を出していただきたいと思うばかりだ。


地下水(井戸水)モニタリングを急げ!

 原発がまき散らした放射性物質によって、人々の生活は一変してしまった。大気も水も汚染され、自然からの恵みで生きてきた日本人は、魚から米粒にまで神経をとがらせねばならなくなった。
そうは言っても、しっかりとこの現実に対応しなければ、われわれは生きていくことができない。
必要な調査は詳細にやってもらい、住民にその内容を正確に知らせるよう要望しよう。われわれが求めているのは「安全情報」ではなく「正確な情報」である。
そこで、これまでのメディアではあまり取り上げてこなかった「地下水」について書いてみたいと思う。
地下水については放射性物質が土壌の表層付近に止まっているので「あまり問題ない」とする論調が多いのだが、実はそんなに簡単な問題ではないのである。
たしかに土壌表層から浸透するスピードは大変遅く、「放射性物質の半減期を考慮すればあまり問題にならない」とする意見はある意味で正しい。がそれは、水の専門家の意見ではない。
地下水の専門家なら、「ある条件下では危険な井戸があるはずだ」というだろう。その条件とは何か。
かつて有機溶剤のトリクロロエチレンや肥料に含まれる硝酸性チッソなどによる地下水汚染が問題になったことがあったが、これらの浸入経路は意外に複雑ですべてが表層からの浸透だけではなかった。大手メーカーの工場では透水係数の高い砂層やれき層をかなりの速度で有害物質が移動した事件もあった。また、地下水を取水するためのボーリングのケーシング(筒のこと)の外壁にそって、汚染物質が表層、あるいは中間層から下層に移動した事例もあった。
放射性物質はチリと同じで降雨時には雨によって流され、地中浸透しなかった粒子は当然表流水となって流れる。この時に川や水路に流出しなかった表流水が低地に滞留した場合や、草むらなどで急激に流速を落として沈降作用を高めた場所では、いわゆるホットスポットが形成される一要因にもなっている。
問題は地下水を取水するためにボーリングをした地点が、地形的にも低地にあって雨水が集まるような場所にあるとき、先程述べた井戸のケーシングの外壁にそって汚染物質が浸入しやすくなっているということである。
地下水汚染は長期にわたる観測が必要であるが、今すぐにでも調査すべき地点も少なくないはずだ。
関係機関は、井戸水を使用している住民の不安を解消するためにも、地下水モニタリングを急ぎ開始し、その地点数を増やし、長期の継続をすべきである。
気が付いてからでは遅すぎる。
毎日、目に見えない放射能に困惑しながら、しかも適切な情報を提供しない政府と東電に対する怒りは増すばかりだが、やるべき事はしっかりと要求しよう。
「未来が見えない」などとは悲しすぎるではないか。

放射能に汚染された下水汚泥の農地還元は愚かな行為だ!

 農水省が下水汚泥の農地還元にあたって、放射性物質の基準値を決めた。それによると、汚泥中の放射性セシウムの濃度が200Bq/kg以下であることが確認され、証明がつけられたものに限り流通を認めるのだそうだ。
農水省消費・安全局は、非汚染農地(放射性セシウム濃度が平均20Bq/kg)10aにつきこの基準の汚泥4トンを施用しても農地土壌の放射性セシウムの濃度範囲に収まると説明する。
だがちょっと待って欲しい。
もともと、放射性物質の濃度など肥料取締法では想定していないので、基準を作ること自体は必要だと思うが、その値がなぜ自然状態の平均値20Bq/kgとならないのだろうか。
いや、なぜそこまでして農地還元にこだわらねばならないのだろうか。
かつて(もう30年ほど前だが)下水汚泥の緑農地還元を力説してきた者からすると、ご都合主義に聞こえるのは私だけだろうか。
長い間、農水省は「農地はゴミ捨て場ではない」と主張して、下水汚泥を農地利用する際には肥料取締法による厳格な適用を求めてきた経緯があり、それはそれで説得力があった。食物をつくる農地に重金属などの有害物質を混入させないための措置としては当然のことと私たちは考えていた。
だから、現場の職員は汚泥の性状に大変気を遣ってきたのである。
それなのに、放射性物質だけはバックグラウンド値をはるかに越えてもOKですという。なぜ汚染物質が「増える」方向でOKなのか理解できない。
しかも下水汚泥の農地還元量は都市部でそれほど比率が高いわけではなく、低レベルなら農地還元していた量をそのまま廃棄物として処理するか、建設資材として再利用する道はいくらでもある。
国民が少しでも放射性物質の被害を減少させようとしているときに、集中して処理された汚泥中の汚染物質を再び、しかも「わざわざ」自然界へ戻してしまうというのは、まさに愚かな行為ではないか。
原発から放出された放射性物質は人工的につくられた汚染物質であり、自然界に飛散したものはできる限りすみやかに除染する方針を確立すべきである。有機物質と放射性物質を意識的に混同して、しかも「少しなら大丈夫だ」などという論理は、自分たちのこれまでの主張を否定することになるのだということを、農水省はよく考えるべきである。

原発の汚染水浄化装置、なぜ米国製、フランス製なのか

 最近のニュースで福島第一原発の高濃度汚染水浄化装置の運転について報じている。ただしこの浄化装置、米国製とフランス製と報じられている。国民はこのニュースを見て、「日本はこういう技術をもっていないのだから仕方ない。もっと早く両国の支援を受けるべきだった」という方もいるだろうし「なぜ日本はこの技術を開発してこなかったの?」と思われた方もいるだろう。
では、本当に日本はそんな技術力のない国なのだろうか?
私は今回の緊急事態に対して、外国の支援を受けるなと言うつもりはないが、日本がなぜ自分の力で解決する能力を高めてこなかったのか、ということをもっと問題にすべきだと考えている。
この問題はわが国の原子力開発のきわめてゆがんだ姿と、原発の危険な姿を併せて見せているので、よく考えていただきたいと思う。
私は前回のブログでは、昭和31年から東京大学の廣瀬孝六郎氏が「低レベル放射性廃液処理実験」を繰り返し実施し、同33年には土木学会年講で結果を報告していると述べた。昭和31年というと、湯川秀樹博士が国の原子力委員会の委員長になった年で、湯川氏は翌年3月に政府の方針に抗議して委員長を辞任している。そのとき湯川氏は「動力協定や動力炉導入に関して何らかの決断をするということは、わが国の原子力開発の将来に対して長期に亘って重大な影響を及ぼすに違いないのであるから、慎重な上にも慎重でなければならない」と述べている。
昭和31年というと今から半世紀以上前のことである。
廣瀬氏は論文の記録を読むと昭和31年から亡くなる39年まで、旺盛に放射性廃液の処理と原子力開発について論説を発表されている。彼は衛生工学という別の世界の研究者ではあったが、湯川氏と同様に何度も「慎重に」「謙虚に」「政治力が技術を左右してはならない」と述べてきた人である。
原子力を動力炉として実用化するには、越えねばならない問題が多すぎることを、多くの科学者が指摘してきたのに、アメリカの圧力に屈して原発建設を進めてきた歴代政権に、今回の事故の遠因があることは間違いない。しかも、誠実に放射性物質の除去実験を行ってきた廣瀬氏らの努力は、「放射性物質がもれ出す事故など起こりえない」という安全神話の空想の元で、その後はまじめに取り上げられないまま現在に至っているのである。
除去技術がないのではない。この実験をやればやるほど原発の危険性を世の中に示すことになる、というのが電力会社と政権の思いだったはずだ。
そして今回の事故。もはや国内に除去技術を育ててこなかった電力会社と政府に対策の手はないと読んだ米仏の企業が、管政権に売り込んだのが今回の顛末だ。フランスの除去事業は500億円を超えているそうで、それも除去物質の処理費用は含まれていない。まさに亡国の原発と、それにしがみつく政府の姿ではないか。
廣瀬孝六郎氏は「日本公衆衛生誌」(昭和36年12月号)に「放射能の公衆衛生に及ぼす影響」という論説を発表し、その最後で次のように述べている。
「放射能は以前は医療だけに使われていたが、今日では、理工医農の広義の理科方面で盛んに用いられている。これはいわゆるBenefit factor(なんと訳してよいか知らない)という考えから、放射能による利益の方がそれから蒙る害より大だから使うという、単純な考えからきている。筆者はある種の細菌が、食物を摂取するために分泌した酵素による分解生成物のうちに、有害物質があってむなしく死滅する細菌の姿、これが人類の目下追求している原子力平和利用と一脈通ずるものがあるような気がするのだが、この考えが杞憂に終わることを、筆者は念願している。」
廣瀬氏が悪夢のような福島原発の事故を見たら、なんと語るのだろうか。

衛生工学の大先達が喝破していた原子力開発のあるべき姿

私の友人の祖父に廣瀬孝六郎という方がいる。わが国の衛生工学分野では戦前戦後の リーダー的役割を担った方で、今日の大都市でも上下水道ではお世話になったところがあるはずだ。彼は昭和13年に国立公衆衛生院の初代衛生工学部長となり、戦後は東京大学の衛生工学の教授として研究を続けられた方だが、その彼の遺稿集を最近拝見する機会があった。
廣瀬氏は昭和30年代初頭にそれまでの衛生工学分野の延長線上で原子力廃棄物(特に液体)処理の研究をされていた。
昭和33年には土木学会年講で「低レベル放射性廃液の処理実験」の結果について発表している。
その頃、わが国政府は「原子力の平和利用」の名の下にアメリカの強い指導で原発の建設を急いでいるときであり、廣瀬氏も政府の委員としてそれらの会議に出席していたようだと遺族はおっしゃっていた。
文字通り「原子力開発」を推進する立場で研究を進められていたのだと思うが、その彼が65歳で逝去する年、昭和39年3月25日付の「原子力タイムズ」に寄稿した「原子力について」と題する一文は、今読んでも興味深いものがある。
この中で廣瀬氏は原子力開発を推進する立場から、
1.廃棄物処理の問題を重大視することが原子力開発の早道であること。…いたずらに研究者の便のみを考えて一般民衆の安全を犠牲にしてもよいという論には賛成できない。
2.原子力は総合技術であるから、真の専門家が生まれるまでは相互協力しなければならない。
3.政治力が技術に先行し、またこれを左右してはならない。…過去にそれらしい匂いのする例があったが、今後は止めていただきたい。
4.現在までの原子力技術の限界を明らかにすること…これはいいかええれば“知らざるを知らずとせよ”ということなのだが、原子力はまだまだ未知の分野が多く、しかもその害は子孫にまで及ぶことを銘記して、各科学技術者は今すこし謙虚でなければならない。これが原子力開発を進めることになろう。
いかがであろうか。
原子力開発に真剣に取り組んでいた科学者の良心が見えるではないか。
「原発は賛成ではないが原子力開発は今後も必要ではないか」という方もいらっしゃると思うが、上記の廣瀬氏の遺言はそのまま受け継いでいただきたいと思うばかりだ。彼の言葉が文字通り実行されていれば、拙速に原発を建設しまくるということもなかったであろう。その後の国会で約束された「自主・民主・公開」という「原子力の平和利用の三原則」も、結局のところ経済成長の影でうやむやにされていまい、とどのつまりが今日の大惨事につながっている。
いまこそ、広島・長崎・ビキニ環礁と三度も原子爆弾の被害者となった日本国民が、放射線被曝については最も先頭を切って、その被害の実相を世界に広めなければならなかった事を、もう一度思い起こそうではないか。
いかなる経済成長も、人類生存に優先するものはないはずだ。
そのために大先輩たちが残した足跡をたどることも意味あることだろう。

汚染水のたれ流し、もうやめてくれ! 国民の目をもっと海へ!

福島原発の事故で72兆ベクレルのストロンチウム90が海へ流出していたことがわかっているが、それらが海洋中でどのような挙動をしているか、いまもって政府は把握しようとしていない。
4月2日のこのブログでも海洋汚染の拡大を封鎖するように強く訴えたが、その後の事態は残念ながら深刻な状態が今も続き、しかも海洋汚染についてはモニタリングもしっかりと実施されていない。
今回のストロンチウム90のたれ流しも、東電がやっと最近になって公表したものである。
福島原発では汚染水の拡大が続いており、東電は浄化装置の設置で何とか切り抜けると言っているが、雨が降ればお手上げになる。京大原子炉実験所の小出氏が述べているように、とりあえず巨大タンカーで移し替えを行う手はずをすぐにでもしなければならないのではないか。
http://hiroakikoide.wordpress.com/page/3/

福島原発は地震と津波で構造物がいたるところで破損しており、汚染水は排水口だけでなく地下浸透して外洋にでている可能性も考えられる。
地下水も海洋も放射能汚染は長期にわたってわれわれの生活に影響を及ぼし続ける。
日本はこれまでも海洋国家として生きてきた。その恵みの源である海が放射能汚染によって死の海になってしまえば、われわれの生活や文化の基盤そのものが失われることになる。
メディアも陸上の汚染には目を向けているが、恐ろしい事態が進行している可能性もある海洋については、ほとんどといってよいほど報道しない。事態がよくわからないままにされているからだ。
海洋のモニタリングポストを飛躍的に拡大し、回遊する魚類だけでなく貝類やコンブといった動きの少ない生物なども指標生物としてモニタリングを定期的に行い、結果をすぐに公表してもらいたい。
東電はいつまでも施設内に汚染水をためておかずに、早期に外へ搬出する準備をするべきである。
貯めていればいずれは外へ漏れ出す危険のあることは、これまでにはっきりしていることだ。
政府は東電と同じように「外洋に出たものは拡散して安全だ」などと今でも考えているのではないか? あるいは、日本の漁獲量が減っても大手商社が海外から海産物を安く輸入して、ついでにTPPを推進する口実もできてシメシメと思っているのではないか。日本の漁業はこのまま放っておけばいずれ消滅だ、と思っているのではないか。
国民の目をもっと海へそそごう!

下水汚泥の放射能汚染は何を示しているか

 原発事故の終息が見えない中、福島県は1日、県中浄化センターの下水汚泥から1キロあたり26400ベクレルの高濃度放射性セシウムが検出されたと発表した。
県は福島第1原発事故で外部に放出された放射性物質が降雨により下水に流入し濃縮されたためだと発表している。
しかし、このことは下水汚泥に止まらない大きな問題を抱えていることに、重大な関心を向けるべきである。
もともと県中浄化センターは分流式の下水処理場であり、本来的には雨水は処理(流入)しないことになっている。とは言っても、処理区内には誤接続などによって宅地内などの雨水が混入することはよくあることだが、その量は降雨量によって変化することを処理場管理者自身がよく把握しているはずである。また、降雨時に流入した(雨水の混入した)汚水の処理過程だけで活性汚泥が大量の放射性物質を濃縮したと判断するのは根拠がなく、実際はよく分からないのではないか。
はっきりしていることは以下のようなことである。
●郡山市を含む2市3町の14万人の汚水を引き受けている下水処理場が、市民生活の場から集めた下水中に放射性物質が大量に含まれていること。
●放射性物質は建築物や大地に付着したものだけでなく、市民の衣服や生活の場からも、下水道に流出しているはずであること。
●それらの一部は雨水に流されて下水処理場に到達しているが、その他はほとんどが阿武隈川に流入するか地下に浸透しているはずであること。
●下水汚泥中に捕捉された放射性物質は、流入したものの一部と見るべきで、その他のものは処理水として阿武隈川に放流されていること。
●もともと下水処理施設は流域の放射能汚染を想定していないため、放射性物質を集積させて高濃度化してしまう事による危機管理は想定していない。つまり、かなり高濃度の放射性物質を下水処理施設は阿武隈川に放流する危険性を持っていること。
●特に阿武隈川は福島県を南北に縦断する重要河川であり、河口は宮城県亘理町でここも甚大な被災地域であること。
このようなことを考えると、東電と県、国は以下のことについてすぐにでも取りかからねばならない。
1.下水処理場の幹線でのモニタリングを早急に行い、地域別の放射性物質の流入量を把握すること。また、この結果を住民に知らせること。
2.下水処理場の流入水と処理水における放射性物質の収支を解析し、汚泥中への集積量と河川への排出量を把握すること。
3.阿武隈川の上流域から河口域まで、主要ポイントにおけるモニタリングを強化すること。その結果と併せて農業用水やその他河川水の利用について県民に広く周知すること。
4.県内の下水処理施設だけでなく、表流水を集積するダム・貯水池、ため池でのモニタリングを強化し、それらの水利用について利用者への周知を図ること。降雨後の貯留水については特に留意すること。
5.降雨を小規模に集積する雨水ます、池、調整池、沈砂池などの底泥についてもサンプリング調査を行い住民に知らせること。
6.地下水中の長期にわたる放射性物質の挙動を把握し、地下水利用者にその結果を知らせるため、全県の保健所を中心とした検査体制を整えること。
7.集積した放射性物質の除去と処理について、東電と国は早急に方針を定めて県民に周知すること。
8.下水処理場の水処理施設、汚泥処理施設だけでなく、放射性物質の集積が考えられる場所で作業に従事する職員の被爆量管理を徹底すること。

福島県では避難区域のことはよく話題にされるが、原発から50キロ以上離れた福島市内や郡山市内の大気中放射線量は通常最大値の数十倍となっており、原発に近い南相馬市やいわき市などよりも高い値が継続して観測されていることにもっと注意を向けなければならない。
下水道が整備されているところほど、放射性物質は高濃度に集積しやすくなっており、モニタリング結果と必要な対策をを早急に県民に知らせるべきである。
法的に立ち入り(作業)が規制されている「放射線管理区域」(0.6マイクロシーベルト/時以上)や、さらに厳しい管理が求められる「個別被曝管理」が必要となる放射線量が観測された地域が広がっていることに、県と国は重大な関心を持ち続けるべきである。




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