ブログ休止についてのお願い

ずいぶんと長い間ブログを休んでおり、心苦しく思っておりますが、暇をもてあましていたわけでも、記述するテーマがなかったわけでもありません。というより、毎日が忙しく追いまくられてきたため、ブログにしたためる心の余裕が生まれていないのが実情です。この間もいろいろとご相談をいただいた件についてはお答えしてまいりましたが、中には公害裁判やリニア問題などすぐに解決つきそうにないものもあり、私も自分の体力の限界を感じ始めております。一日の半分は農作業に従事しております。
ということで、しばらくブログの休止を正式に公表しようと思い立った次第です。ただし、ブログは書かずとも相談はいつも受けておりますのでご安心下さい。
最近、大きな事件になった後藤さんの人質事件で有名になってしまったシリアやヨルダンですが、湾岸戦争の直前にこれらの国を訪れていた私としては、大きな悲しみを感じております。新聞記事やテレビで「アレッポ」が「イスラム国」支配地域への入り口のように書かれているのは私にとってやるせない思いなのです。かつてシリアの首都ダマスカスからアレッポに向かい、ユーフラテス川の上流部を見ながら夕日を眺めていた私は、この地の人々の生活に強く惹かれていました。帰りはとんでもないアクシデントの旅でしたが、悲惨なテロ事件を想像させるような場所でもなく人々でもありません。誰がこんな地域にしてしまったのか、心から憤りを禁じ得ません。
いずれ訪れるであろう平和な西アジアの遺跡と水の旅に、もう一度出かけてみたい。その時まで世界的な財産であるチグリス・ユーフラテス川流域の自然と文化を戦禍から守らねばなりません。戦争はすべてを破壊します。外国の軍隊に他国の文化を消滅させる権利などどこにもないのです。

別所沼の再生を願って(その2) 市民の力で水環境の再生を!

 このブログでも昨年5月に紹介したさいたま市の別所沼が、ついに水質浄化に動き始めたことを最近地元の方からご連絡をいただいた。
 昨年のブログでは「今なら遅くはないが放置すると最悪の事態になる」と警告したが、行政の動く気配が感じられず、ややきつい言葉で行政に対する意見を述べた。
 その後の経過はあまりお聞きしていないが、昨年5月に地元の方々の勉強会でお話しさせていただいた後に、市民の皆さんの動きが盛り上がっていたようだ。
 先日いただいたメールには「別所沼を守る会ニュース第7号」(2013/10/1)が添付されており、そこにはさいたま市の都市公園課長が「別所沼のかいぼりを行う」と発言したことが書かれていた。
 昨年5月から1年足らずの間に行政が妥当な方針に転換されたことを歓迎するとともに、「別所沼を守る会」を中心とした市民の皆さんのご努力に敬意を表したいと思う。
 だたし、今年の「かいぼり」には注意点がいくつかあるので、その点について述べておきたい。
1.「かいぼり」はもともと地域住民が参加できる水質改善手法の一つであるが、別所沼は長期にわたり底質が堆積しており、実態がほとんどわかっていないので、今回は市民が直接池内に入るのは危険を伴いやすい。したがって、池の外でできる仕事をしていただきたい。例えば、魚類や水生生物の水槽への移動や外来魚を区分して移動させるなどの仕事は、委託された業者さんとともにできるはずである。観察記録を自分たちで作ることもできるだろう。
2.行政には来年度以降のかいぼり事業を市民参加でできるように、可能な限りシルト分や浮泥(ヘドロ)部分を除去し、干し上げ後に固結した池底面となるようにしていただきたい。ただし、予算の限界もあるのでどこまで除去できるかはわからないが、一定期間の干し上げが翌年夏の状況に大きく影響することだけは確認できるだろう。
3.市民の皆さんにとっても今年ははじめての経験だから、今後のために何が必要なのかを学ぶつもりで、楽しくかいぼりに参加しながら見守っていただきたい。
 別所沼は小さな池だが、それでも自然界の水の世界がそこには広がっているはず。市民の大切な水環境を今後も守り続けていただくために、そして何よりも、まず池の本当の姿を取りもどすために、どのようにすればよいか行政と市民が協働で考えてていただければありがたいと思う。

質問、ご意見をお送りいただく皆様へ

 今年になってからも畑仕事と地域の講演準備が忙しく、ブログの更新が進んでおりませんがお許し下さい。
ところで、これまでにもたくさん質問やご意見をいただいているのですが、ご自分の居住地や「どこの水」なのかをはっきりさせないでご質問される方がいらっしゃいます。
私は個人情報にはまったく興味はありませんので、細かい住所までは結構ですが「どこの水の話なのか」ははっきりとお書きいただきたいと思います。水問題はきわめて地域的な性格の強い事柄ですし、全国で私の知っている場所もありますが、知らない場所もたくさんありますので、ぜひ「どこの水の話」でご相談されるのかを明確に書いていただくようにお願いいたします。

福島第一原発の地下水汚染と海洋たれ流し、私がかつてブログで警告したことが現実となってしまっていることに愕然とします。日本の土木技術ならば遮水壁を築造することなど簡単にできるのに、東電はなぜすぐに着手しなかったのか? ここにも情報の隠蔽体質と安全軽視の姿勢が露骨に表れています。茨城沖の魚類から高濃度セシウムが検出されたニュースも、あまり報道されなくなってしまっているが、マスコミも一段落してしまったのではないかと危惧している。
何度もいうように、放出された放射性物質の多くは現段階で水を媒介にして移動・拡散・集積を繰り返しているので、絶えず監視が必要である。地下水、河川水、河川敷、海洋の汚染にもっと警鐘を鳴らそう!

十勝の公園池でもアオコが大発生!

 

かつて北海道帯広市には環境基本計画策定でお世話になり、その後も仕事で4年間ほど居住したことがある。その際お世話になった帯広百年記念館学芸員の池田さんから「近隣の公園の池にアオコが大発生している」とfacebookでご指摘があった。
十勝池2007年のアオコ 
2007年当時の写真は右のようで、この時はアナベナが優占種となっていたようだが、今年はミクロキスティスが異常増殖したようだ。

89日にこれまでの様子を概略でうかがって、私なりの意見を取り急ぎお送りし、その中でこのまま推移するとミクロキスティスのような植物プランクトンが増殖する可能性があることを書いたが、想定していた事態がすぐに起こってしまい大変残念に思っている。

以下、その時に池田さんとやりとりしたメールのうち、少し長くなるが私の回答部分を含めて抜粋を転載させていただこうと思う。

●容量が420トンほどの小さな池ですので、水の入れ替えが簡単にできる。したがって、水質改善は容易にできる可能性がある。水深が浅いので、透明度のよい時期は池底まで太陽光が入射して池全体での光合成が可能になっていたはず。この水深ですと、池底までの水温躍層があまり顕著ではなく、表層がかなり暑くなったときには全層で水温が上昇してしまう場合があり、ミクロキスティスのような植物プランクトンが優先する可能性が高い。

●水源を井戸にしたことで、窒素の豊富な地下水が池にはいるようになった可能性があります。池から揚水した地下水は一度どこか池のようなところにプールして、そこから滝にして落としているのでしょうか?

●礫やフトン籠で生き物の生息場所を確保したのはよいことだと思います。

●(2004年までは動物プランクトンがどんどん多くなり、アオコの影も見えず、この調子なら多くの生きものが戻って来るだろうと思われました(スジエビ、ハゼのなかまなど)。ところが2005年にちょっと濁っているかな?という程度の変化があり、2006年には急激な抹茶状態となりました。青い色ははじめて見たもので、誰かがペンキを捨てたのかと思いました。その頃は知識がなく(というよりも北海道にいてアオコなど知る由もないという感じ)おそろしかったのを覚えています。サカマキガイすらあっという間に全滅してしまいました。)

大変よくストーリーがわかります。

おそらく、地下水を揚水しはじめて毎年有機物量が増加していたのだと思いますが、それらが池底に堆積し再溶出し始めたことで、池内の栄養塩濃度が一気に上昇し始めたのが2005年頃なのかも知れません。一度この状況になると、堆積している底泥の処理をするか、流入水と池内滞留水を日量200トンほど浄化して池に戻してやるか、あるいは流入水量を増加させて池内滞留時間を2日以内に抑えてやる(つまり日量200トン程度を流入させて押しだし流れを作る)等々、何らかの対策をとらねばなりません。

●対症療法でも一定期間持続することと、市民のみなさんに理解してもらうこと、市民参加で取り組んでもらうこと、ができれば、池の浄化も楽しくできると思います。夏場の水温も大きな要因ですが、「池の水替え」の際にどこまで水位を下げたか、どれくらいの期間、底泥が干しあげた状態になっていたか、によってその効果は全く変わってきます。

●一般に嫌気状態の底泥は、そのまま放置するとリンの再溶出の原因となりますが、冬季に一度完全に干しあげて(これを「かいぼり」と言います)底泥表面の嫌気状態を改善してあげると、数年は(有機物量にもよりますが)アオコは発生しません。

干し上げ(かいぼり)は対症療法ではなく、古くからわが国のため池で行われてきた行事の一つで、たまたまそれを水質改善手法の一つとして、私たちが利用するようになった立派な水質改善技術です。ですから、これをもっと利用してもらうことを私は地域の方々にお勧めしています。

それは、もっとも処理費用が安価で地域住民の参加が容易だからです。横浜市の三ツ池公園ではこの手法で何年も市民参加によって池の浄化と外来魚駆除を行ってきました。行政に委託でやってもらうのは除去した底泥を処分してもらうことぐらいです。帯広ならば栄養分豊富な底泥を産廃処理などせずに、畑地に還元してやれば一石三鳥・四鳥にもなるでしょう。餌付けも問題かも知れませんが、これを消滅させることが困難ならば、市民に「必要量」を説明して協力してもらうことも大切だと思います。

●(この池は市民による利用が多く、家族連れがボートに乗っているようなところです。このような池の状態でも、です。この状態でボート営業を行うことは適切と思われますか?)

現状を放置すると、おそらくミクロキスティスが異常増殖した際にマット状になり、異臭を放つようになりますから、ボートどころか市民は池から遠のいてしまうでしょう。手を打つなら今しかありません。

●池内のpHが高いのは、植物プランクトンの光合成によって炭酸が消費されるため上昇しているのだと思います。水源のpH9というのはよくわかりません。冒頭で地下水を一度どこかにプールしていますか?とお聞きしたのはこれがあったからです。

●(現在は動物プランクトンもほとんど見られず、トンボの数も多くても300頭程度で頭打ちです。)

池内を健全な生態系に復帰させるには、富栄養状態を早く抜け出すことだと思います。そうすれば早期に以前の状態を取り戻すことができると思います。小さな池ですので結果も早く出るものと思います。

 

夏でも涼しかったあの帯広で、アオコの大発生は驚かれたことと思うが、かつて私はあの冷涼な釧路湿原東部湖沼でアオコの発生を確認していたので、予想した事態と言えなくもない。北海道でも本格的な富栄養化対策が必要な気候変動になっているのかも知れない。


原料が検出限界値以下でも、汚泥からなぜ大量のセシウムが?

 

昨年、福島第一原発が爆発した際、広範囲に飛散・沈着した放射性物質が降雨によって河川や海に流出していることがわかっている。

昨年の4月には首都圏の上下水道の汚泥からも高濃度のセシウムが検出され、飲み水の汚染も危惧される状況がしばらく続いた。この現象は福島県や関東・首都圏だけでなく遠く離れた新潟市内の浄水場の汚泥からもセシウムが検出されたことで、放射性物質の汚染が広範囲におよんでいることを示した。

福島県内では土壌や用水に問題がないと思われていた水田で、収穫した米から国の基準値を超えるセシウムが検出され問題になっている。

このような問題を考える際に、一番気をつけていただきたいのは汚染物質の「濃度と総量」である。

私たちは環境汚染を考えるとき、一般に濃度を基準にしてその汚染の強弱を測っている。以前のブログで紹介したホルムアルデヒドも、水道水質基準では「10.08唹焚次廚版仕戮納┐気譴討い襦

日本の環境基準だけでなく、国際的なさまざまな汚染物質の基準も濃度で示されており、このことによって私たちは異なった地域でも同一物質の汚染状況を客観的に評価ができるようになっている。

しかし、環境汚染を評価する際に濃度だけに頼っていると、とんでもない事態を見逃してしまうことがある。たとえば、ある有害物質が動植物の体内に蓄積する可能性があるとすれば、たとえ毎日摂取される濃度が低濃度であっても、動植物が毎日どの程度の量を蓄積していくのか、という「量」が問題になってくるのである。

さて、原発事故で環境中に放出された膨大な量の放射性セシウムも、同じように濃度と量の問題が起こっていたのである。河川水11函謀たりでは「検出限界値以下」で処理されているのに、その河川水を水道水として処理をしてみると、残された汚泥からは1堙たり数万ベクレルのセシウムが検出された事例が頻発しているのはなぜか? このカラクリは以下のようなものである。

河川水中の放射性セシウムの濃度が10.1ベクレルであったとすると、通常の計測ではセシウムは検出もされず「検出限界値以下」で処理されてしまうが、この河川水を原水として日量2万トンの水道水を供給していたとすれば、その2万トンには総量で200万ベクレルの放射性セシウムが含まれていたことになる。この河川水からセシウムをすべて除去して水道水を供給したとすると、そのセシウムは浄水汚泥に移行していることになり、あとは浄水汚泥中の総量200万ベクレルがどれだけ濃縮されるかで、1堙たりのセシウム量が変化するということになるのである。

昨年4月以降に上下水道の処理施設の汚泥から大量の放射性セシウムが検出され、国の処分基準である1堙たり8000ベクレルを超えてしまったのは、処理過程での濃縮が主な原因だったのである。

ということは、一日当たりの処理水量と発生汚泥量、汚泥中の含水率とセシウム濃度がわかれば、逆算することで原水中のセシウム濃度も算出することができるということになる。

「水道原水は検出限界値以下なのにセシウムはやっぱり入っていたのか」と思われるかも知れないが、むしろ日本の水道技術とそこに関わる職員の努力で、処理後の浄水はWHO飲料水水質ガイドライン(わが国飲料水新基準もこれにならっている)をはるかに下回る放射線量となっていることを知っておいていただきたいと思う。

ただ、原発事故から一年以上経過しても、関係機関は汚泥中の放射線量データの計測と公表は継続するべきである。それは、自然界における放射性物質の挙動をモニタリングする役割を果たしているし、たとえ微量でも地域の人々に摂取されるセシウム量を知ることができるようにしておく必要があると考えるからである。

(本文は同趣旨の内容を「食べもの文化」に投稿したことをお断りしておく)


いまどき、クリプトですか?

 

クリプトスポリジウムとは、主に牛、豚、犬猫などの哺乳類の腸に寄生する大きさ46マイクロメートルの原虫のこと。19966月に埼玉県越生町の水道水でこのクリプトスポリジウムを原因とする集団食中毒が発生して、世間に知られることになった。(以下「クリプト」と表記)クリプトによる水道水汚染事故はわが国ではこれがはじめてであったと記録されている。

この汚染事故の後の10月には、当時の厚生省が暫定対策指針を作成して、濁度管理を徹底すれば汚染を防止できることなど、応急処置も含めて全国の水道事業者に周知している。

この後、暫定指針が見直しされ、2007年には「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」として詳細に対応策が記述されている。

クリプトの原因についても家畜だけでなく野生のシカやサルなど哺乳動物が原因となることも早くから指摘されており、指針には指標菌による「汚染のおそれの判断」についても記述している。

ところで、817日の信濃毎日新聞によると、このクリプトスポリジウムが「昨年度以降、少なくとも県内6カ所の水道施設の原水で検出されたことが16日、県環境部のまとめで分かった」というのである。

いまどきクリプトですか? と驚いてばかりいられないのは、その記事で県水大気環境課がクリプトの検出原因について「(野生鳥獣が原因となっている)可能性はあるが、データや根拠がないため、はっきりとは分からない」と語ったという点である。

えっ? それが問題ですか? と私は思う。

記事を読む限りでは、県は昨年度の水道事業者のデータを見ていて今年の8月になってやっと実態を把握したと言うことであり、私はこの方が大きな問題だと思う。

原因は水源近隣の野生動物が原因であろうことを水道事業者が一番よく分かっており、、問題は検出した時点でなぜすぐに住民に公表し、対策をとっていることを知らせなかったのかと言うことである。「対策指針」に則って速やかに処理をすることも可能だったのではないだろうか。

いや、そんなことは分かっていて黙って処理をしていたと言うことなのか?

ことは地域住民の健康に関わる重大問題であり、このような情報を長期に隠したままにしていると、水道事業や水道水そのものに対する信頼を大きく損なうことを、事業者は肝に銘じていただきたいと思う。

クリプトが検出された原因をさぐるより、情報公開への対応が遅れた要因を追求する方が先ではないのか!

県は「いまどきクリプトですか」と言われるのがイヤで、ことさら問題の本質を避けているように見えてならない。

はっきり申しあげて、クリプト対策は10年前の話だ。県は小規模水道事業者に対する指導と援助をもっと真剣にやっていただきたい。

(揚げ足をとるようだが「野生鳥獣」の鳥類はクリプトの原因にはならないはず)


水道水汚染事故から私たちは何を学ぶか

 

本年517日、埼玉県企業局が浄水から水道水質基準を超えるホルムアルデヒドを検出したため、利根川および江戸川流域の水道事業体では取水停止の措置をとった。なかでも、正確迅速な対応ができなかった千葉県内では、519日に5市(36万戸、87万人)で断水や減水に追い込まれる事態となった。

この水質汚染事故の特徴は汚染物質であるホルムアルデヒドが、原水である河川水中から明瞭に検出できず、そのため原因物質と排出源の特定に時間を要してしまった点にある。

524日に厚生労働省と環境省は今回の汚染事故の原因となったホルムアルデヒドは、その前駆物質であるヘキサメチレンテトラミン(ここではヘキサミンと記述)が河川水中に流入し、それが浄水プロセスの塩素と反応してホルムアルデヒドを発生させたと発表した。
●ホルムアルデヒドはどうやって検出されたか?
 
ホルムアルデヒドはメチルアルコールが酸化してできる簡単な構造の物質で、いろいろな合成樹脂の材料としても広く使われている。大変便利な物質だが、体内にはいるとDNAを損傷することや発ガン性が認められており、わが国のPRTR制度では昨年度から特定第一種指定化学物質として登録されているものである。

この特定第一種指定化学物質とはダイオキシン類、ベンゼン、ヒ素などと同じように人に対する発ガン性等があると評価されているものである。当然、このホルムアルデヒドには水道水質基準値が設けられており、水道法では1Lあたり0.08mg以下とされている。

今回の事故で埼玉県企業局が浄水後の水道水から最初にホルムアルデヒドを検出したときの濃度は0.168mgL5172145分)と報告されている。

ホルムアルデヒド自体は刺激臭の強い物質だが、水道水質基準値レベルの濃度では刺激臭もしないので、日常的な官能試験では発見できず、定期的に実施される水質試験分析でなければ検出することはできない。つまり、今回の事故では埼玉県企業局が定期水質検査を行うまで、ホルムアルデヒドがいつから、どの程度、水道水中に入ってしまっていたかは実はわからなかったと言うことになる。

したがって、「この程度なら大丈夫」とか「水道水を飲んでガンになったらどうする」というどちらも意見も今のところ根拠はないのである。
 しかも、たまたま定期試験分析で検出されたからよかったが、試験分析担当者などいない中小の水道事業者にとって見れば、今回の問題は見逃せない重大問題でもある。というのは、わが国の上水道は一般に浄水過程で塩素消毒を行っており、原水中に塩素と反応して有害物質を産生させるものがあれば、それは全国レベルの大問題なのである。 

●なぜこんな事になったの?

浄水場でホルムアルデヒドを産み出してしまった原因はヘキサミンであると報告されており、これを河川に放流した企業も特定されているが、ヘキサミンの自然界への排出については法規制がないため、水質汚濁防止法や水道法では現時点では処罰対象にならないといわれている。

一方で、ヘキサミン自体もPRTR制度では第一種指定化学物質に登録された有害化学物質であり、そこから産み出されるホルムアルデヒドも人の健康に重大な影響与える物質となっているのである。

今回の事故の直接の原因はヘキサミンを排出した企業にあることは当然であるが、有害化学物質が自然界へ排出された際に及ぼす環境影響を広く検討していなかったことも、事態を大きくしてしまった原因であることも間違いない。

●有害化学物質による汚染にもっと目を向けよう

今回の事故について「ホルムアルデヒドを産生する要因は多すぎて規制は無理」とか「藻類からもホルムアルデヒドは生まれる」といった意見もあるが、健康被害の未然防止と今日の科学技術の到達レベルという視点から見れば、問題解決を目指した見解ではない。
 水道水に限って言えば、水道水質基準があるのだから、その基準値を守るために浄水プロセスで有害な有機化合物を産生する物質を洗い出し、一方で少なくともPRTR制度で登録が義務づけられている有害化学物質との関係をチェックして法的規制の検討に乗り出すことが、今回の事故の教訓を生かす道であろう。

これらの動きを促進して法的規制をすすめるためにも、私たちは有害化学物質による汚染が生活の隅々に潜んでいることに、もっと目を向けていく必要がある。


「水の相談所」事務所移転のお知らせ

 本年4月に長野県上伊那郡中川村に転居いたしました。
これに併せて当相談所の事務所も当地に移転いたしました。
すばらしい景観とおいしい水や野菜、温かい人々に囲まれて新たな人生をスタートさせました。
天竜川が造形した伊那谷は、水の恩恵と恐ろしさを味わってきた長い歴史があります。この地域の水環境を後世に継承するためにも、全国の水問題に積極的に関わってまいります。
ネット上ではこれまでどおり皆様のご相談をお受けする所存ですので、これまでどおりご意見やご要望をお送り下さい。


別所沼の再生を願って

 さいたま市の県庁そばにある別所沼は古くから近隣の人々の水辺として親しまれてきたところである。地元の方の話では、もともとは湧水などが流入する深みのある池だったようだが、今は水深2mにも満たない。周辺の環境が激変して流入量も減少し、併せて堆積物からの栄養塩類などの回帰もあって近年では気温が上昇する季節になると水の華に悩まされるようになった。
 地域の方々からご相談を受けたので池の調査をしてみたところ、たしかにアオコとユーグレナの集積でひどい状態だったが、印象としては「今ならなんとか間に合う」という感じだった。ただし、今後このまま放置すればいつでも異臭の発生や景観障害、魚類の斃死など無惨な状態にいたってしまうことは明らかだろう。
 公園管理を担当しているさいたま市の公園課は「効果があるかどうかわからないものに金はかけられない」とか「干し上げして希少種などが見つかったら困る」などと言っていたそうだが、何もしない言い訳をしているとしか思えない貧弱な対応をしているようだ。いや、このまま放置して最悪の事態を招いた際にどのように責任を取るつもりなのかと問いたいぐらいだ。
 私の経験で言えば、都市公園のこのような問題はすでに20年以上前から全国で手がけられており、対策手法を勉強しようと思えばいくらでも事例はある。あまり予算もかけずに市民参加イベントとして成功させた例もたくさんある。
 あとは管理している行政がその気になるだけである。周辺住民は町内会を含め早く池の再生を願っているのだから、行政は周辺住民との連携を早く確立して事業を進めるべきである。
 水の専門家として今の別所沼をながめると、これ以上何もしない言い訳のための調査は必要ではなく、早期に今年の台風シーズン終了後にとるべき方策を周辺住民と協議すべきである。
 いまどき、政令市でこれほど後ろ向きで消極的な行政(管理職)もめずらしい!
別所沼公園(さいたま市)

高圧洗浄機で除染ができるのか?

 福島県内で放射線量の調査を行っていて気になったことがある。主に降雨によって放射能が流出した実態を調べ、膨大な量の放射能が海に流れ出てていることや、豪雨時の河岸堆積物に大量の放射能が残存していることがわかった。
 一方で福島県内は9月21日の台風15号の豪雨をはじめ大雨が何度かあったが、空間線量自体は劇的に低下したというわけではなく、福島市や郡山市のような都市化された地域でも、降雨ですべての放射能が洗い流されたわけでもなさそうである。理由は放射性物質が空気中のチリや粘土鉱物にくっついて沈着するものの、微小粒子が目に見えないほどのくぼみに入り込んで、少しぐらいの降雨では洗い流すことができないからだ。
 そこで、除染のために高圧洗浄機を使っている様子がニュースでも報道されるのだが、本当にこれで「除染」できているのか疑問である。第一に高圧ジェットで隙間から微小粒子をたたき出すことに成功しても、周辺の空気中に飛散しているだけで一時的にその地点の空間線量が下がったとしても、周辺に再沈着してしまえば地域の沈着総量は結局のところあまり低下しないのではないかという危惧である。第二に、高圧洗浄機は少量の水で微小粒子をたたき出すことに成功しても、その後始末を考えておかなければ、結局大量の放射性物質を集積させて放置することになってしまうのである。
都市部の下水道雨水幹線下流の沈殿物から高濃度のセシウムが検出されるのは、その事例の一つである。
放射能の除染は「たたき出す」「洗い流す」だけでは完結しておらず、大気中への再飛散防止と流出物の処理を完璧に行わなければ、地域の空間線量は低下しないはずだ。
手間はかかるが、吸着フィルムの施工や側溝への吸着物質の投入など、発生源でのきめの細かい除染対策が必要ではないか。


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